代表挨拶
在宅療養児への歯科からの支援
在宅で療養している小児の多くは医療的ケア児とされます。医療的ケア児に定義はありませんが、2016年に児童福祉法が改正された際、「人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」、と表現されました。19歳以下の医療的ケア児は、2017年には18951人であり、経年的にほぼ直線的に増加しているといわれています(奈倉,2019)。また在宅療養児は医療的ケア児だけでなく、慢性疾患、小児がんなどの疾病がある子どもたちも含まれます。医科では、小児在宅医療の重要性が注視され、NICUからの在宅移行支援や、在宅医療支援プロジェクトなどの取り組みが行われてきました。一方、歯科ではどうでしょうか。各地域で小児在宅歯科医療の必要性に迫られた歯科医師や歯科衛生士が、孤軍奮闘しているのが今のところの状況です。
外出困難な小児にとって、在宅歯科医療の充実は喫緊の課題です。予防歯科的な観点からう蝕、歯周病にさせないこと、また生命予後にも関与する経口摂取の可能性のために、地域での在宅歯科医療の充実が求められています。しかし、ただ「小児在宅歯科医療を行いましょう」と言うだけでは、地域で動きだすことは難しいでしょう。それは、対象となる在宅療養児の個別性が多様であること、そして医療を提供する側の歯科医療機関の行えることがそれぞれの事情によって異なることが、理由の一部としてあげられます。小児在宅歯科医療では、地域のかかりつけ歯科医としての役割、また実際に訪問診療を行うのではなく、後方支援病院としての役割など、いくつもの役割が存在します。
東京都多摩地区では、都立小児総合医療センター小児歯科の小方清和先生を代表として、地域歯科医師や基幹病院と協働して在宅小児をシームレスにサポートする、「多摩小児在宅歯科医療連携ネット(たましょう歯ネット)http://tamashou-shika.com/index.html」を発足しました。そして、2018年10月には、全国の歯科医療関係者が集まり、第1回小児在宅歯科医療研究会が東京で、2019年10月には第2回小児在宅歯科医療研究会が幕張で開催されました。小児在宅歯科医療の充実には、地域でのシステム作りが重要です。小児在宅歯科医療研究会では、各地域の実情に応じた取り組みを通じ、社会に貢献できる歯科医療の普及を目指した活動を行っていきます。
小児在宅歯科医療研究会代表 田村文誉
(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)